イタリア語のアルファベットは、英語と同じラテン文字を使いながら、文字の数と読み方が大きく異なります。英語が26文字であるのに対し、イタリア語の基本アルファベットは21文字で、スペルと発音がほぼ一致しているという特徴があります。
料理名やブランド名など、日常のなかにもイタリア語は溢れています。その文字の仕組みを知ると、パスタやジェラートのメニューも少しちがった角度から読めるようになります。
この記事では、イタリア語アルファベットの基本構成から読み方のルール、日本人がつまずきやすいポイントまでを順番に整理します。イタリア語をこれから学ぼうとしている方も、料理や旅行でイタリア語に触れる機会が多い方も、参考にしていただける内容です。
イタリア語のアルファベットは何文字ある?
イタリア語のアルファベットの全体像を押さえると、英語との違いがわかりやすくなります。文字の構成と、英語にあってイタリア語にない5文字の扱いを確認しておきましょう。
基本は21文字で構成される
イタリア語のアルファベット(Alfabeto italiano)は、A・B・C・D・E・F・G・H・I・L・M・N・O・P・Q・R・S・T・U・V・Zの21文字が基本です。英語の26文字と比べると、J・K・W・X・Yの5文字がありません。
イタリア語にはもともとこれら5文字の概念がなく、固有のイタリア語単語にはほとんど登場しません。ただし外来語や固有名詞では使われることがあり、Jeans(ジーンズ)・Kabuki(歌舞伎)・Yoga(ヨガ)などが例として挙げられます。
J・K・W・X・Yはどう使われる?
この5文字は、外来語・略語・固有名詞に限って使われます。英語・ドイツ語・フランス語などから流入した語や、日本語由来の語(Kaki=柿、Kabuki=歌舞伎)でも見られます。
ラテン語の名残として残るケースもあり、イタリアのサッカークラブ「JUVENTUS(ユベントス)」はラテン語で「若者・青春」を意味する語がそのまま使われています。固有のイタリア語単語の綴りには登場しないものの、完全に使われない文字ではないと理解しておくと混乱しにくくなります。
英語との文字数の違いが生まれた背景
イタリア語はラテン語を起源とするロマンス諸語の一つです。ラテン語にはもともと現代英語のJ・K・W・X・Yに相当する独自の音が存在せず、イタリア語もその流れを引き継いでいます。英語は古英語・フランス語・ラテン語の複合的な影響を受けて発展したため、結果的に文字数が多くなりました。
英語の26文字にある J・K・W・X・Y の5文字は含まれない。
外来語・固有名詞ではこの5文字も使われる。
ラテン語を起源とする言語構造がその背景にある。
- 基本アルファベットはA〜Zのうち21文字
- 除外されるのはJ・K・W・X・Yの5文字
- 外来語や固有名詞では5文字も使用される
- 英語より文字数が少ない理由はラテン語起源の言語構造にある
各文字の読み方と名称一覧
イタリア語では、アルファベットの「文字の名称」と「実際の発音(フォニックス)」が異なります。名称を覚えると会話でスペルを伝えやすくなり、フォニックスを覚えると単語を読む際に役立ちます。
21文字の名称一覧
イタリア語の21文字の名称は以下のとおりです。英語の読み方とは大きく異なる文字が多く、特に子音の名称には「エ」「ア」が組み合わさった形が目立ちます。
| 文字 | 名称(カタカナ表記) | 文字 | 名称(カタカナ表記) |
|---|---|---|---|
| A | ア | L | エッレ |
| B | ビ | M | エンメ |
| C | チ | N | エンネ |
| D | ディ | O | オ |
| E | エ | P | ピ |
| F | エッフェ | Q | ク |
| G | ジ | R | エッレ(巻き舌) |
| H | アッカ | S | エッセ |
| I | イ | T | ティ |
| (J) | イルンゴ | U | ウ |
| (K) | カッパ | V | ヴィ |
| (W) | ドッピオヴ | (X) | イクス |
| (Y) | イプシロン | Z | ゼータ |
Rは巻き舌、Lは日本語のラ行
日本人の学習者が最初につまずきやすい点の一つが、LとRの区別です。Lは日本語の「ラ行」に近い発音で、舌先を上前歯の付け根に当てて発音します。Rは巻き舌で発音し、舌先を上あごに軽く当てながら息を流します。
「amore(アモーレ)」「Roma(ローマ)」などの単語でRの練習をしておくと、実際の会話で自然に出やすくなります。最初は日本語の「ラ行」に近い形でも意思疎通は可能なので、焦らず繰り返し練習するとよいでしょう。
BとVも混同しやすい音
英語と同様、BとVの区別も日本語話者には難しいポイントです。Bは日本語の「バ行」と同じ口の動きで発音できます。Vは下唇を上の前歯で軽く噛みながら発音する音で、英語のVと同じ要領です。
「Bravo(ブラーヴォ)」という単語はこの2つの音が両方含まれており、BとVの練習に適した言葉です。口の形の違いを意識して発音すると、区別がつきやすくなります。
- L:舌先を上前歯の付け根に当てる・日本語ラ行に近い
- R:舌先を震わせる巻き舌・単語を繰り返して習得するとよい
- B:日本語のバ行と同じ
- V:下唇を前歯で軽く噛みながら出す音
- 「Bravo」でBとVを同時に練習できる
発音変化のルール:C・G・Hの組み合わせ
イタリア語では、特定の文字が組み合わさると発音が変わるルールがあります。その中でもC・G・Hの関係は最もよく登場するため、最初に整理しておくと単語の読み方に迷いにくくなります。
Cは後ろの母音で「カ行」か「チャ行」に変わる

Cの発音は、直後に来る母音によって変化します。a・o・uの前では「カ・コ・ク」の音([k])になり、e・iの前では「チェ・チ」の音([ʧ])になります。「casa(カーザ:家)」と「ciao(チャオ:こんにちは)」を比べるとわかりやすく、綴りのCが同じでも発音がまったく異なります。
料理名でよく見る「cena(チェーナ:夕食)」「cucina(クッチーナ:キッチン・料理)」なども同じルールで読めます。eとiの前ではチャ行系の音になると覚えておくとスムーズです。
Gも同様にa・o・uとe・iで発音が変わる
Gもa・o・uの前では「ガ・ゴ・グ」([g])、e・iの前では「ジェ・ジ」([ʤ])と発音します。「gatto(ガット:猫)」と「gelato(ジェラート)」を並べると違いが直感的に理解できます。
「Gino(ジーノ)」「Giorgio(ジョルジョ)」などのイタリア人名にもこのルールが使われています。名前を読む際にも役立つルールです。
Hはche・chi・ghe・ghiで音を「固定」する役割
Hそのものは無音文字で、単体では発音されません。ただし、CとGの後にHを入れると、eやiの前でも「カ・キ」「ガ・ギ」の硬い音を保てます。「che(ケ)」「chi(キ)」「ghe(ゲ)」「ghi(ギ)」がその例で、料理名の「gnocchi(ニョッキ)」にも使われています。
a / o / u の前 → 硬い音(カ・コ・ク / ガ・ゴ・グ)
e / i の前 → 軟らかい音(チェ・チ / ジェ・ジ)
H を挟むと e / i の前でも硬い音を維持できる
- C+a・o・u → カ行の音
- C+e・i → チャ行の音(例:ciao)
- G+a・o・u → ガ行の音(例:gatto)
- G+e・i → ジャ行の音(例:gelato)
- che・chi・ghe・ghi → H挿入で硬い音を保つ
ZとSの発音:2種類ある音に注意
ZとSはそれぞれ2通りの発音を持つため、同じ文字でも単語によって音が異なります。ここを知っておくと、読み方の予測がしやすくなります。
Zは「ツ」と「ズ」の2種類
Zには無声音の[ts](ツ)と有声音の[dz](ズ)の2種類の発音があります。「pizza(ピッツァ)」の語尾のzは[ts]、「zaino(ザイノ:リュック)」の語頭のzは[dz]です。辞書では発音記号で区別されますが、日常的には単語ごとに覚えていく形になります。
料理名に多く登場するZは、大半が[ts]の音です。「mozzarella(モッツァレッラ)」「pizza(ピッツァ)」などは日本でも親しみのある単語なので、発音を確認する入り口として使いやすいでしょう。
Sは位置によって清音と濁音が変わる
Sは語頭や無声子音の前では清音の[s](ス)、母音に挟まれた位置や有声子音の前では濁音の[z](ズ)になりやすい傾向があります。「sole(ソーレ:太陽)」は清音、「casa(カーザ:家)」の真ん中のsは濁音です。
厳密には方言や地域によって異なる場合もありますが、北部と南部でSの発音にわずかな差があることが知られています。まず清音で読む練習をしておき、よく使う単語は個別に確認するとよいでしょう。
SCという子音結合も頻出する
SCという組み合わせは、後続母音によって発音が変わります。SC+a・o・uは「スカ・スコ・スク」、SC+e・iは「シェ・シ」になります。「scena(シェーナ:場面)」「scarpa(スカルパ:靴)」が代表例です。CとGの変化ルールと共通する考え方で整理できます。
Z → 無声[ts](ピッツァ)または有声[dz](ザイノ)
S → 語頭・無声子音前は清音[s]、母音間では濁音[z]になりやすい
SC+e・i → シェ・シの音(例:scena)
- Zは単語ごとに[ts]か[dz]かを確認する
- Sは位置によって清音・濁音が変わる
- SCはe・iの前でシェ・シの音になる
- 料理名(pizza・mozzarella)はZ発音の練習に適している
イタリア語の母音と発音のシンプルな仕組み
イタリア語の発音がシンプルと言われる理由の一つは、母音の読み方がほぼ一定であることです。英語のような複数の読み方がなく、書いてあるとおりに読む原則が守られています。
5つの母音はほぼ「そのまま読む」
イタリア語の母音はA・E・I・O・Uの5つで、それぞれ「ア・エ・イ・オ・ウ」と読みます。英語のように同じ母音が文脈によって複数の音に変わることは少なく、日本語の母音と非常に近い発音です。この点がイタリア語を学ぶ日本語話者にとって有利なポイントになります。
ただしEとOにはそれぞれ「開口音(口を大きく開ける)」と「閉口音(口をあまり開かない)」の2種類があります。例えばEは「bene(ベーネ)」の閉口音と「è(エ)」の開口音で音色が異なります。初心者のうちはあまり意識しすぎず、まず「エ」「オ」と明確に発音することが基本です。
スペルと発音が一致している言語
イタリア語の最大の特徴の一つは、綴りと発音がほぼ対応していることです。英語では「read」の過去形と現在形で発音が異なるような例外が多くありますが、イタリア語では一度ルールを覚えると初見の単語でも読める場合がほとんどです。
料理名でいえば「bruschetta(ブルスケッタ)」「tagliatelle(タリアテッレ)」なども、発音ルールを知っていれば綴りから読み解けます。食材や料理の名前を覚えながら発音ルールを体感していくと、記憶に残りやすいでしょう。
アクセントの位置と長音に注意
イタリア語では、語尾にアクセント記号(`)がつく単語があります。「città(チッタ:都市)」「caffè(カッフェ:コーヒー)」などで、この記号があるときは語尾の母音を強めに発音します。アクセント記号がない単語は、原則として後ろから2番目の音節にアクセントが置かれることが多いです。
また、同じ子音が連続する「二重子音(geminate)」はどちらの文字もしっかり発音します。「pizza」は「ピッツァ」と促音が入りますが、これも二重子音のルールです。この仕組みに慣れると、イタリア語らしいリズムで話せるようになります。
- 母音は日本語と近く初心者にとって親しみやすい
- EとOには開口・閉口の2種類があるが最初は意識しすぎなくてよい
- 綴りと発音がほぼ一致している
- 語尾のアクセント記号は強く読む
- 二重子音は促音として発音する
まとめ
イタリア語のアルファベットは基本21文字で、綴りと発音がほぼ一致する仕組みは初心者にとって取り組みやすい出発点になります。
まずC・Gの発音変化ルールと、LとRの音の区別を練習しておくと、実際の単語を読む際にすぐ役立ちます。「ciao(チャオ)」「gelato(ジェラート)」「pizza(ピッツァ)」など、なじみのあるイタリア語の単語で確認してみると理解が深まります。
文字の仕組みを知ると、料理名・地名・ブランド名の読み方が変わり、イタリアをより身近に感じられるようになります。ぜひ一つひとつのルールをゆっくり確認しながら楽しんでみてください。

