イタリアの平均年収は、日本の感覚だけでは正しく捉えにくい数字です。旅行や移住を考えるときに、実際のところどれくらいの水準なのか気になる方は多いのではないでしょうか。
Istat(イタリア国家統計局)やJob Pricing社の調査など、複数の資料でイタリアの年収水準が示されています。ただし集計方法によって、数字の見え方が大きく変わる点には注意が必要です。
この記事では、公的データを軸にしながら、地域差や学歴・性別による違い、そして年収だけでは見えない生活実感まで、順番に整理していきます。
イタリアの平均年収はいくらなのか、まず全体像をつかむ
年収の数字は、どの調査を基準にするかで前提が変わります。ここでは公的機関のデータを中心に、代表的な数字を比べながら全体の水準を確認します。日本の平均年収と比べるときの注意点もあわせて見ていきましょう。
Istatの公式データで見る平均年収
イタリア国家統計局(Istat)が2025年に公表した2022年分のデータでは、フルタイム換算した従業員1人あたりの年間総支給額は37,302ユーロとなっています。この数字は税金や社会保険料が差し引かれる前の総額で、日本で言う額面の年収に近い考え方です。
性別で見ると、男性は39,982ユーロ、女性は33,807ユーロと、6,000ユーロ近い差があります。また、公的機関に勤める従業員は39,670ユーロ、民間企業の従業員は36,034ユーロという結果も示されています。
民間の調査で見る年収の実態
Job Pricing社がまとめた全国平均の年間総支給額(RAL)は、2022年を基準とした調査で31,856ユーロです。Istatのフルタイム換算値より低く出ているのは、パートタイム勤務者も含めた全労働者の平均を算出しているためです。
集計対象の違いによって、同じ「平均年収」という言葉でも数千ユーロ単位で数字が変わります。記事や資料を比べるときは、フルタイム換算なのか、全労働者の平均なのかを確認しておくと安心です。
月収に換算するとどのくらいか
イタリアの給与は、年間12か月分に加えて13か月目のボーナス(トレディチェージマ)が支給される契約が一般的です。契約によっては14か月目の支給(クアトルディチェージマ)が加わることもあります。
年間総支給額を13か月や14か月で割ると、月あたりの目安が見えてきます。ただし所得税や社会保険料の負担は所得水準や家族構成によって変わるため、正確な手取り額は個別の契約内容で確認するとよいでしょう。
日本の平均年収と比較するときの注意点
日本の平均年収と単純にユーロ建ての数字を比べると、イタリアの水準は低く見えることがあります。ただし為替レートは日々変動するため、比較する時点のレートによって印象が変わります。
物価水準や税制、社会保障の仕組みも国によって異なります。年収の数字だけで生活の豊かさを判断せず、後述する生活費とのバランスもあわせて確認しておくと、実態に近い比較ができます。
・フルタイム換算の平均年収 37,302ユーロ
・男性39,982ユーロ、女性33,807ユーロ
・全労働者平均のRAL 31,856ユーロ
・公的機関39,670ユーロ、民間企業36,034ユーロ
Q1. イタリアの平均年収は日本よりかなり低いのですか。
公的データを額面で比べると低く出る傾向がありますが、物価水準や税負担も異なるため、単純比較は難しい面があります。
Q2. フルタイム換算の年収と、全労働者平均の年収はどちらを見ればよいですか。
働き方の実態に近いのは全労働者平均ですが、正社員としての水準を知りたい場合はフルタイム換算の数字が参考になります。
- イタリアの平均年収は、集計方法によって31,000ユーロ台から37,000ユーロ台まで幅がある
- フルタイム換算では男女差や公民差がはっきり出ている
- 日本との比較は為替レートや物価差を踏まえて行うと実態に近づく
地域によって大きく変わるイタリアの年収事情
イタリアは南北で経済状況が大きく異なり、年収の水準にもはっきりとした地域差があります。ここでは地域別・都市別の数字を比べながら、差が生まれる背景まで見ていきます。
北部・中部・南部の年収差
Job Pricing社の調査によると、北部の平均RALは32,913ユーロ、中部は31,956ユーロ、南部・島嶼部は29,375ユーロとなっています。北部と南部の差は3,500ユーロを超える水準です。
北部には製造業や金融業の大企業が集まりやすく、雇用の選択肢も比較的多い地域です。一方、南部は失業率が高めで、産業の発展度合いにも差があるとされています。
都市別に見る年収の実態
州別に見ると、ロンバルディア州が33,635ユーロと最も高く、ラツィオ州が33,242ユーロ、トレンティーノ=アルト・アディジェ州が33,532ユーロと続きます。ロンバルディア州の州都ミラノは、ビジネスの中心地として知られています。
一方で、カラブリア州やシチリア州など南部の州は、平均より低い水準にとどまる傾向があります。同じイタリアでも、州によって年収のイメージはかなり違ってきます。
地域差が生まれる背景
北部と南部の差は、産業構造の違いによるところが大きいと考えられています。北部は自動車や機械などの製造業、金融サービス業が発達しており、専門性の高い仕事の求人も多い地域です。
南部は観光業や農業の比重が高く、季節雇用や非正規雇用の割合も北部より高い傾向にあります。生活費が北部より抑えられている地域も多く、年収差がそのまま生活水準の差になるとは限りません。
地域を選ぶ際に確認しておきたいポイント
イタリアでの就労や移住を検討する場合、年収の水準だけでなく、家賃や食費などの生活費もあわせて確認すると判断しやすくなります。同じ年収でも、住む地域によって手元に残る金額は変わります。
求人情報を見る際には、勤務地の州や都市名を確認し、地域別の年収データと照らし合わせておくと、想定とのずれを減らせます。
| 地域 | 平均RAL(Job Pricing調査) |
|---|---|
| 北部 | 32,913ユーロ |
| 中部 | 31,956ユーロ |
| 南部・島嶼部 | 29,375ユーロ |
| ロンバルディア州 | 33,635ユーロ |
| ラツィオ州 | 33,242ユーロ |
たとえば、ミラノでの就職を検討している場合、求人票の年収に加えて、現地の家賃相場や公共交通機関の料金を調べておくと、実際の生活費とのバランスが把握しやすくなります。イタリア政府観光局の資料や現地の生活情報を組み合わせて確認する方法が実用的です。
- 年収は北部が高く、南部・島嶼部は低めの傾向がある
- ロンバルディア州やラツィオ州は平均より高い水準にある
- 地域を選ぶ際は年収と生活費の両方を確認すると判断しやすい
職種・学歴で変わる年収の実態
同じイタリア国内でも、学歴や職種によって年収の水準は大きく変わります。ここでは学歴差や業種別の傾向、役職による違いを整理します。
学歴による年収差
Job Pricing社の2024年調査では、大学卒業者の平均RALは41,716ユーロ、大学を卒業していない人の平均は30,063ユーロとなっています。学歴による差は1万ユーロを超える水準です。
Istatのデータでも、学歴が上がるほど年収が高くなる傾向がはっきり示されています。中学卒業程度の学歴と大学卒業以上の学歴を比べると、年収の差は6割前後に達するという結果です。
業種別に見る年収の高い分野・低い分野
民間企業の業種別データでは、エネルギー資源の採掘分野が48,965ユーロと高水準です。金融関連の業種も46,423ユーロと高めで、航空運輸は38,642ユーロ、出版関連は35,344ユーロとなっています。
一方、清掃サービスは20,896ユーロ、警備サービスは21,047ユーロ、福祉関連サービスは22,219ユーロと、業種によって2倍以上の差が生まれています。専門性や資格が必要とされる仕事ほど、年収が高くなる傾向があります。
役職・雇用形態による違い

Forbes Advisor Italiaが紹介するデータでは、管理職クラスの平均RALは103,418ユーロ、中間管理職は55,632ユーロ、一般事務職は32,174ユーロ、現場作業職は25,522ユーロとされています。役職が上がるほど年収の伸びは大きくなります。
役職による差は、責任の範囲や意思決定への関与度によって説明されることが多いとされています。同じ業種でも、役職次第で年収の水準は大きく変わります。
専門職や熟練職の需要
トラック運転手や電気工事士、パン職人といった仕事は、体力的な負担や不規則な勤務時間から敬遠されやすい一方、需要の高さから月給が2,000ユーロを超えるケースもあると報告されています。
資格や経験が必要な専門職は、人手不足を背景に条件面で優遇される場合があります。年収を考えるときは、平均値だけでなく職種ごとの需給バランスにも目を向けると、実態がつかみやすくなります。
・エネルギー資源採掘 48,965ユーロ
・金融関連 46,423ユーロ
・清掃サービス 20,896ユーロ
・警備サービス 21,047ユーロ
Q1. 学歴がなくても年収を上げることはできますか。
専門性の高い技能職や資格が必要な仕事では、学歴よりも経験や資格が重視される場合があります。
Q2. どの業種を選べば年収が高くなりやすいですか。
エネルギーや金融など専門性が求められる業種は水準が高めですが、需給バランスや地域差もあわせて確認すると安心です。
- 学歴による年収差は1万ユーロ以上になることがある
- 業種によって年収は2倍以上の開きが生まれる
- 役職や専門性の高さが年収を左右する大きな要素になる
男女差と雇用形態による違い
イタリアの年収は、性別や雇用形態によっても差が生まれます。ここでは男女間の格差や、公的部門・民間部門、正社員とパートタイムの違いを見ていきます。
男女間賃金格差(ジェンダーペイギャップ)の実態
Istatの調査では、2022年の男女間賃金格差は5.6パーセントとなっています。時給ベースで見ると、全体平均が16.4ユーロに対し、女性は15.9ユーロ、男性は16.8ユーロという結果です。
学歴が上がるほど男女差も広がる傾向があり、高等教育を受けた層では格差が約4割に達するというデータもあります。役職や勤続年数の違いが背景にあるとされています。
公的部門と民間部門の年収差
フルタイム換算の年間総支給額で比べると、公的機関に勤める従業員は39,670ユーロ、民間企業の従業員は36,034ユーロとなっています。公的部門のほうが平均で3,000ユーロ以上高い水準です。
公的部門は勤続年数に応じた昇給制度が整っている場合が多く、雇用の安定性も評価されやすい分野とされています。一方、民間企業は業種や企業規模による差が大きい点が特徴です。
正社員とパートタイムの違い
イタリアではパートタイム勤務の割合も一定数あり、フルタイム勤務者との年収差は大きくなりやすい傾向があります。パートタイムは勤務時間に応じた計算になるため、単純な年収の比較には注意が必要です。
雇用契約の種類によっても年収は変わります。有期契約や派遣的な働き方は、無期契約に比べて年収や待遇面で差が出やすいとされています。
若年層・新卒の年収事情
イタリアでは若年層の失業率が比較的高く、2026年時点でも15パーセント前後の水準が報告されています。新卒や若手の年収は、経験豊富な世代と比べて低めに設定される傾向があります。
若年層は実家から独立するタイミングが遅れやすいとも言われており、収入の低さが背景の一つとされています。キャリアを重ねるにつれて年収が上がっていく点は、日本と共通する傾向です。
| 区分 | 年間総支給額の目安 |
|---|---|
| 公的機関(フルタイム換算) | 39,670ユーロ |
| 民間企業(フルタイム換算) | 36,034ユーロ |
| 男性(フルタイム換算) | 39,982ユーロ |
| 女性(フルタイム換算) | 33,807ユーロ |
たとえば転職を検討する際は、募集要項の雇用形態(無期契約か有期契約か、フルタイムかパートタイムか)を確認したうえで、公的機関と民間企業の年収水準を比べておくと、条件面の判断がしやすくなります。
- 男女間賃金格差は時給ベースで5.6パーセントとされている
- 公的機関は民間企業より平均年収が高い傾向にある
- 雇用形態や年齢によっても年収の水準は変わる
年収だけでは見えないイタリアの暮らし向き
年収の数字だけを見ると、日本より低いと感じる方も多いかもしれません。ここでは物価や税制、生活費とのバランスから、暮らしの実感に近づけて考えてみます。
物価と年収のバランス
イタリアは年収の水準に比べて、外食費や住居費が割高になりやすい国とされています。特に都市部では、収入に対する生活費の負担感が大きいという声も少なくありません。
一方で、旬の野菜や果物などの生鮮食品は比較的手頃な価格で手に入りやすく、家庭で自炊を中心にする暮らし方が根づいています。物価の高さと年収の低さが単純に釣り合っているわけではない点は、意識しておくとよいでしょう。
税金・社会保障制度の違い
イタリアの所得税は累進課税で、所得水準に応じて税率が変わります。社会保険料の負担割合も日本と異なるため、額面の年収だけで手取りを推測するのは難しい面があります。
年金制度についても、受給開始年齢や必要な拠出期間が日本と異なります。在日イタリア大使館の公式情報など、制度の詳細が分かる資料を確認しておくと、正確な理解につながります。
生活費の内訳から見る実感
独身での一人暮らしを想定した場合、家賃や光熱費、食費、交通費などをあわせた生活費は、月1,200ユーロから1,700ユーロ程度になるという調査結果が紹介されています。年収から税金や社会保険料を差し引いた手取り額と照らし合わせると、余裕はそれほど大きくないケースもあります。
住居費は地域によって差が大きく、都市部と地方では同じ間取りでも家賃が大きく変わります。生活費の内訳を確認する際は、住む地域を具体的に想定しておくと、実感に近い数字がつかめます。
年収と生活満足度の関係
年収の水準だけで生活の満足度が決まるわけではないという指摘もあります。家族や友人と過ごす時間を大切にする暮らし方や、休暇の取りやすさなど、収入以外の要素が満足度に影響しているとされています。
年収を比較する際は、数字だけでなく、働き方や休暇制度、家族との時間の取り方といった生活文化の違いもあわせて理解しておくと、より立体的にイタリアの暮らしをイメージできます。
・住む地域の家賃相場を具体的に確認する
・税金や社会保険料を差し引いた手取り額で考える
・年収だけでなく休暇制度や働き方もあわせて見る
Q1. イタリアの物価は本当に安いのですか。
生鮮食品は手頃な傾向がありますが、外食費や住居費は年収に対して割高になりやすいとされています。
Q2. 手取り額はどこで確認できますか。
税率や社会保険料は制度改正で変わることがあるため、在日イタリア大使館などの公式情報で最新の内容を確認すると安心です。
- 物価と年収のバランスは、項目によって印象が大きく変わる
- 税制や社会保障制度の違いが手取り額に影響する
- 年収以外の生活文化も含めて理解すると実感に近づく
まとめ
イタリアの平均年収は、集計の前提によって3万1千ユーロ台から3万7千ユーロ台まで幅があり、地域や学歴、性別による差も大きいというのが実態です。
これから年収データを確認するときは、まず自分が知りたい地域や職種の数字を具体的に絞り込み、Istatなど一次情報の最新ページで裏付けを取ることをおすすめします。
数字だけでなく、生活費や働き方も含めてイタリアの暮らしを眺めてみると、また違った印象が見えてくるはずです。

